
米国知財便り
USPTO、実体審査前の特許検索にAIパイロットプログラム(ASAP!)を開始 ― 出願初期段階からの品質向上を狙う新たな取り組み ―
2025.10.09
米国特許商標庁(USPTO)は10月8日、審査の品質・応答速度・効率を大幅に向上させるため、AI(人工知能)を活用した新パイロットプログラム「Artificial Intelligence Search Automated Pilot(ASAP!)」の開始を発表しました。
このプログラムは、USPTO内部のAIツールを用いて実体審査前に先行技術検索を自動で実施し、その有効性や実務的効果を検証するものです。
1.背景と目的
USPTOは近年、「強い特許付与の保証(ensure their patents born strong)」を掲げ、審査品質の向上に注力しています。
USPTOのジョン・A・スクワイアーズ長官は次のようにコメントしています。
「AIへの積極的な活用を約束しました。ASAP! はその第一歩です。特許の品質は出願時点から始まります。AIツールを活用して、審査官と出願人の双方がより良いスタートを切れるようにします。」
2.ASAP!プログラムの概要
ASAP!では、出願人に対して、AIが自動的に抽出した注意すべき潜在的な先行技術上の論点「トップ10リスト」を示した初期通知を送付します。
このAI支援による検索結果通知(AI-Assisted Search Results Notice:ASRN)によって、出願人は実体審査に入る前に、自身のクレームを先行技術と照らして早期に評価する機会を得ることができます。
これにより、出願人は実体審査前に自らのクレームを早期評価し、以下のような初動対応を検討することが可能となります。
・ 予備補正書(Preliminary Amendment)の提出
・ 宣誓書や証拠の準備
・ 審査延期(Deferral)の申請
・ 明示的放棄(Express Abandonment)による手数料返還請求
AI検索は、共同特許分類(Cooperative Patent Classification: CPC)による分類情報に加え、出願書類の明細書・クレーム・要約などの文脈データを解析して実施されます。
3.今後の展開
本プログラムの成果は、実体審査前検索の有効性の評価、ASRN生成の拡張可能性の検証、今後のパイロットや追加施策の立案に向けたデータ収集などに活用されます。
ASAP!プログラムへの参加を希望する場合は、所定の請願書(Petition)と請願料の提出が必要です。
詳細は、連邦官報(Federal Register)に掲載された告示をご参照ください。