米国知財便り
PTAB、実際の利害関係人(RPI)分析を明確化した決定を先例指定(Corning Optical Communications v. PPC Broadband 事件)
2025.10.29
米国特許審判部(PTAB)は、実際の利害関係人(RPI: Real Party in Interest)の特定に関する重要な判断を示した Corning Optical 事件を「先例(Precedential Decision)」として指定しました。
Corning Optical Communications RF, LLC v. PPC Broadband, Inc.
IPR2014-00440, Paper 68(PTAB、2015年8月18日)
(先例指定。ただし §II.E.1 を除く)
本件では、特許権者が「申立人が全てのRPIを開示していない」としてIPR手続の却下を求め、PTABはこれを認めました。PTABは、35 U.S.C. §312(a)(2) に基づき、「すべてのRPIが特定されていない限り、PTABは申立を審理できない」との明確な判断を示し、当該IPR申立を却下し本件を終結しました。
この決定を受け、USPTOは先例指定の理由を示す覚書を発出し、RPI開示の完全性がIPR手続の前提条件であることを改めて強調しています。
― 日本企業にとって重要な実務的対応 ―
今回の決定は、形式的要件の厳格運用を示すものであり、米国でIPRを活用する日本企業にとっても注意が必要です。
・関連会社や親会社もRPIとなり得る:
出資関係や実質的な指示・支援があれば、請求人以外の法人もRPIとみなされる可能性があります。
・開示漏れは手続打切りのリスク:
RPIの不備は単なる形式エラーではなく、IPR全体が無効となる可能性があります。
・早期確認体制の構築を:
米国代理人任せにせず、社内で関係者・資金の流れ・契約関係を整理し、開示内容を精査することが重要です。
― まとめ ー
Corning Optical事件は、RPI特定の厳格性を明確に示した先例であり、今後のIPR戦略では、関係当事者の洗い出しと開示の完全性確保がこれまで以上に求められます。