“いざ”に備える企業のパートナー。

岸本外国法事務弁護士事務所

ブログ

夜空で一番明るい星は昔“赤い星”だった? ― シリウスの小さな謎

2026.03.08

少年のころだったでしょうか。気付いた頃には、冬の夜空に青白く燦然と輝くシリウスが、いつしか心惹かれる存在になっていました。

 

真冬の帰り道には、いつもオリオン座の三ツ星と、その先に輝くシリウスを見上げながら家路についたものです。あのひときわ明るい星はなぜあんなに輝いているのだろう、と子ども心に不思議に思っていた記憶があります。

 

そんなシリウスについて少し調べてみると、思いがけない話に出会いました。古代の文献の中には、シリウスを「赤い星」と記しているものがあるというのです。

 

例えば、2世紀の天文学者プトレマイオスは、著書『アルマゲスト』の中でシリウスを赤みがかった星として記録しています。

 

また、古代ローマの哲学者セネカも、シリウスについて「火のように赤い星」と書き残しています。さらに、中国の古い天文記録にも、赤い星として言及されている可能性があると指摘されています。

 

もしこれらの記録が文字通り正しいとすれば、現在青白く輝くシリウスが、かつては赤く見えていたことになります。しかしここで問題があります。星の色が変わるほどの進化には、通常は何百万年、あるいはそれ以上の時間が必要です。わずか二千年ほどで星の色が変わることは、現在の天文学ではほとんど考えられていません。

 

では、なぜ古代の人々はシリウスを赤い星と書いたのでしょうか。現在もっとも有力とされている説明によると大気の影響です。

 

シリウスは日本などの中緯度地域では、南の低い空に見えることが多い星です。地平線近くの星の光は大気の影響を強く受けるため、赤や青に激しく色を変えてまたたきます。冬の夜にシリウスをじっと見ていると、赤く光ったかと思えば青く輝き、色が次々と変わるのが分かります。

 

古代の人々がこの様子を見て、「赤い星」と表現したとしても不思議ではありません。二千年前の観測記録を読み解くとき、そこには天文学だけでなく、言葉や観察の文化も関わってくるのです。