
米国知財便り
USPTO、PTABでの「裁量による審理開始却下」に関する新制度を導入
2025.05.24
USPTOは2025年3月、PTABでの特許無効審理(IPRなど)において、「裁量による却下の判断」と「本案審理」とを分けて行う「分離プロセス(bifurcated process)」を導入しました。この制度は、新たに発表されたガイダンスに基づくもので、IPR開始の可否に関する「裁量却下(discretionary denial)」の判断を、PTABではなくUSPTO長官が行うことになりました。
つまり、新制度では、まず長官が裁量による審理開始却下の可否を判断し、却下されなければPTABが申し立てられたクレームの無効性に関する実体審理に進むという運用が採用されます。
【PTAB裁量却下制度の比較表】
項目 | 導入前(従来の方式) | 導入後(分離プロセス) |
裁量却下の判断主体 | PTAB(審判部のパネル) | USPTO長官(またはその代理、シニア判事の助言あり) |
裁量判断のタイミング | 無効理由と同時に判断 | 本案審理前に先に判断(分離して実施) |
裁量判断と本案審理 | 同じパネルが両方を判断 | 別の審判パネルが本案のみ審理(裁量で却下されない場合) |
判断書の構成 | 両論併記、長文(数十ページ) | 裁量判断は簡潔(1~2ページ) |
判断の一貫性 | パネルごとにばらつき | 長官に一本化され統一性が向上 |
透明性・予測可能性 | 低いとの批判 | 政策判断が明示されやすく透明性向上 |
制度の柔軟性 | PTABの裁量に一任 | 政策的な統制が強化 |