米国知財便り
プロセキューション・ラッチェス(審査懈怠)をめぐる動向
2026.04.07
米国特許実務において長年認められてきた「prosecution laches」の適用範囲を巡り、現在、注目すべき動きが見られています。
prosecution lachesとは、出願人による不合理かつ不当な審査遅延があった場合に、たとえ特許が成立してもその権利行使を制限し得るとする衡平法上の原則です。継続出願(continuation)を繰り返す米国特有の実務と密接に関係するため、従来より潜在的なリスクとして認識されてきました(レメルソン事件などが有名)。
この点に関し、現在、Hyatt v. Squires 事件において、米国最高裁による審理が行われるかどうかが注目されています。本件では、法定の特許期間が定められているにもかかわらず、衡平法であるlachesにより権利を制限することの是非が争点となっています。これは、Petrella v. MGM や SCA Hygiene v. First Quality といった過去の最高裁判例との関係でも整理が求められる論点です。
もっとも、現時点(2026年4月)では、最高裁が本件を取り上げるかどうかは未確定であり、直近でも特段の手続的進展は見られていません。他方で、CAFCは引き続きprosecution lachesの有効性を前提としつつも、その適用については慎重な姿勢を示しており、単なる審査期間の長さのみで直ちに不合理な遅延と評価されるものではないとの判断も見られます。
現時点では制度自体が直ちに変更される状況にはありませんが、仮に最高裁が本件を取り上げた場合、continuation実務を含む米国出願戦略全体に影響を及ぼす可能性も否定できません。
企業実務としては、継続出願を含む長期的な出願戦略において、審査対応の経緯や合理性を意識した記録管理を行っておくことが、将来的なリスク低減の観点から重要と考えられます。
静かな論点ではありますが、米国特許実務の前提に関わる問題として、その行方を静かに見守っていきたいところです。