米国知財便り
AI生成作品と著作権 ― 米最高裁、Thaler v. Perlmutter事件で下級審判断を支持
2026.03.04
【Key Points】
・米連邦最高裁判所(Supreme Court of the United States)は2026年3月2日、AI生成作品の著作権をめぐる事件の上訴を却下し、下級審判決を維持した。
・下級審は、AIが単独で生成した作品は著作権登録の対象とならないと判断していた。
・原告 Stephen Thaler は、AI「DABUS」による創作物の著作権を主張していたが、米国の裁判所は、著作者は「人間」であることを要するとの立場を改めて確認した。
1.本件の概要
「人工知能(AI)が生成した作品に著作権は認められるのか。」
この問題をめぐる訴訟で、2026年3月2日、米連邦最高裁は上訴を受理しない決定を行いました。これにより、AI単独による創作物には著作権は認められないとする下級審の判断が確定しました。
本件の原告は、AI研究者の Stephen Thaler 氏です。
Thaler氏は、自身が開発したAIシステム「DABUS」により生成された画像作品 “A Recent Entrance to Paradise” について、作者をAIとする著作権登録を申請しました。しかし 米著作権局はこれを拒絶し、著作権は人間による創作(human authorship)を前提とするとの立場を示しました。
Thalerは氏この判断を不服として提訴しましたが、コロンビア特別区連邦地裁および控訴審であるコロンビア特別区巡回区連邦控訴裁判所はいずれも著作権局の判断を支持しました。
今回、最高裁が上訴を受理しなかったことで、AI単独生成作品は著作権登録の対象とならないとの法的立場が維持されることとなりました。
2.特許分野でも争われた「AI発明者」
Thaler氏は著作権事件に先立ち、特許分野でも同様の主張を行ってきたことで知られています。彼はAIシステム「DABUS」を発明者として特許出願を行い、AIを発明者として認めるべきであると主張しました。
しかし、米国特許商標庁(USPTO)はこの出願を拒絶し、その後の訴訟においても裁判所は、特許法における発明者は自然人(natural person)であると判断しました。この事件についても最終的に、米連邦最高裁は上訴を受理しませんでした。
同様の出願は欧州、英国、オーストラリアなどでも行われましたが、現在のところ主要な法域ではいずれもAIを発明者として認めないとの判断が示されています。
3.Practical Takeaways(実務上のポイント)
・AI単独生成物は、現行米国法の下では著作権保護を受けない。
・特許法においても、発明者は自然人であるとの解釈が各国で維持されている。
・もっとも、AIが創作・発明のツールとして利用される場合には、人間の創作的関与の程度が権利化の可否を左右する重要な要素となる可能性がある。
・生成AIの利用が広がる中で、人間の関与(human contribution)の整理や記録が、将来的に権利化戦略上の重要なポイントとなる可能性がある。