“いざ”に備える企業のパートナー。

岸本外国法事務弁護士事務所

米国知財便り

PTAB、地裁裁判とUSPTO無効審判で異なるクレーム解釈を採用した事案に関する決定を先例指定 - Revvo Technologies, Inc. v. Cerebrum Sensor Technologies, Inc. ―

2025.11.04

USPTOの特許審判部(PTAB)は11月3日、地裁とPTABで異なるクレーム解釈の立場を取ったIPR申立人に関する決定を、先例(precedential)として指定しました。

IPR2025-00632, Revvo Technologies Inc., v. Cerebrum Sensor Technologies, Inc., November 3, 2025, Paper 20

 

 

本件では、IPR申立人が地方裁判所では「非侵害を主張しやすくするための狭いクレーム解釈」を示しつつ、PTABの無効審判(IPR)では「特許無効を主張しやすくするための広いクレーム解釈」を提示していました。

 

PTABは当初、こうした立場の違いを問題視せず審理開始(institution)を認めていましたが、長官はこれを取り消し(vacate)、差し戻し(remand)を命じました。

 

長官は、「単に地裁における特許権者のクレーム解釈を受け入れた」という理由のみでは、PTABで異なる立場を取ることの正当化にはならないと指摘しています。

 

さらに長官は、異なる解釈を取る場合には、その違いが生じる合理的な理由や、フォーラム(法廷)間での文脈の違い(例:証拠の範囲、争点の相違)を明確に説明する必要があると述べました。

 

本決定は、IPR申立人による「フォーラムごとの戦略的主張の使い分け(litigation position shifting)」に対して、USPTOが一貫性と誠実性を求める姿勢を明確にしたものといえます。

 

― 実務上の対応について ―

 

・クレーム解釈の一貫性の確保:

地裁訴訟とPTAB手続が並行する場合、申立人は両フォーラムでの主張整合性を慎重に検討する必要があります。

無効審理での「広い解釈」と侵害訴訟での「狭い解釈」を使い分ける戦略は、今後PTABで厳しくチェックされる可能性があります。

 

・異なる立場を取る場合の説明責任:

フォーラム間で異なる解釈を提示する場合には、その理由(技術的背景、証拠差異、法的基準の違い等)を明確にし、書面上で説明することが不可欠です。

 

・戦略上の影響:

本決定は、PTABが「フォーラム間での主張の一貫性」を重視する傾向を強める可能性を示唆しており、今後、審理開始判断や最終決定においても考慮される可能性があります。