
米国知財便り
PTAB、SharkNinja Operating LLC v. iRobot Corp. を先例指定から解除(de-designate)
2025.09.29
特許審判部(PTAB)はSharkNinja事件において、特許権者からの、IPR申立は時効により却下されるであろうとの主張や、実際の利害関係人(RPI)の未記載により禁反言の適用を受けるであろうとの主張がある場合を除き、審理手続の開始段階においてRPIの分析を行う必要はないと判示しました(SharkNinja Operating LLC v. iRobot Corp., IPR2020-00734, Paper 11, 16–20頁(PTAB 2020年10月6日))。もっとも、RPIの開示には、時効や禁反言の問題以外にも役割があります。
SharkNinja事件審決は、「先例的判断(precedential decision)」としての指定が解除され、PTABに対して拘束力を持たなくなりました。
参考:
PTABにおける 「先例的判断(precedential decision)」 と 「参考的判断(informative decision)」 の意味について:
PTABにおける決定の分類
PTABが下す決定にはいくつかのレベルがあります。その中で特に重要なのが次の2つです。
1.先例的判断(Precedential Decision)
・法的拘束力を持つ判断。
・PTAB内の将来の事件において、同様の事案に対して必ず従うべき基準となります。
・判例のように扱われ、PTAB全体に統一的な指針を与える役割を果たします。
2.参考的判断(Informative Decision)
・拘束力なし。
・ただし、重要な手続上の問題や、典型的なケースにおけるPTABの考え方を示す「参考例」として用いられます。
・実務家や当事者にとって、今後の訴訟戦略を立てる際の手がかりになります。
今回の審決で示された 『SharkNinja事件の先例指定解除』 とは、本件事件が 「PTAB全体を縛るルール(precedential decision)としての効力を失った」という意味です。したがって、今後は他の事件で 「必ずしも同じ判断が適用されるとは限らない」ことになります。