
米国知財便り
SharkNinja事件(RPI開示をめぐる判断)の実務的影響と注意点
2025.09.29
1.背景
(1)RPIに関する規則
・ IPR(特許無効審判)を申し立てる際、申立人は「実際の利害関係人(Real Party in Interest: RPI)」を開示する義務があります。
・ RPIを正しく開示していないと、
・・訴訟提起(送達)から 1年以内にIPR手続を行わなければ時効(§315(b))
・・ 禁反言(estoppel, §315(e))
の場面で問題になる可能性があります。
(2)SharkNinja事件の判断
PTABは2020年に次のように判断しました:
・ 原則:申立段階(institution stage)で、必ずしもRPI分析を行う必要はない。
・ 例外:ただし、特許権者が「時効」や「禁反言」に関連して主張した場合には検討が必要。
つまり、申立時点では 「RPIの詳細確認が後回しでもよい」 というメッセージとなり、申立人側には有利に働きました。
2.先例解除による実務上の注意点
(1)拘束力がなくなる
・ SharkNinja事件が「先例」から外されたため、今後の事件では PTABが自由に異なる判断を下すことが可能になります。
・ 申立人は「RPI分析は初期段階では不要」とは安易に考えられなくなります。
(2)RPI開示のリスク管理が重要に
- 今後は、RPIの不備があれば 手続無効や却下のリスクが高まります。
- 特に、複数の関連企業や投資家が関与する場合、RPIを適切に特定しておく必要があります。
(3)戦略的影響
・ 申立人側:RPIの開示を早めに明確化し、余計な争点を避けるべき。
・ 特許権者側:RPIの不備を突いて、申立を無効化できる可能性が広がる。
まとめ:
SharkNinja事件は一時的に申立人に有利な基準を示しましたが、今回の先例解除によって「安全網」が外れた状態となりました。
「今後は申立段階からRPIを丁寧に開示しなければならない実務環境に戻った」というのがポイントです。