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岸本外国法事務弁護士事務所

米国知財便り

USPTO、AIA審判の審理開始判断を長官が直接行う新手続を導入

2025.10.18

米国特許商標庁(USPTO)は、2025年10月20日より、アメリカ発明法(AIA)に基づく当事者系レビュー(Inter Partes Review:IPR)および付与後レビュー(Post-Grant Review:PGR)における審理開始(institution)判断を、長官が直接行う新手続を導入する旨を発表しました。

 

本手続は、2025年3月に導入された裁量的考慮プロセス(discretionary considerations process)を発展させたもので、従来PTAB(特許審判部)パネルが行っていた審理開始判断の最終権限を長官が担う点が特徴です。

 

新制度の概要

 ・ 長官は、少なくとも3名のPTAB判事との協議を経て、裁量的考慮事項・本案の内容・非裁量的考慮事項を総合的に検討。

・ その結果に基づき、審理開始を許可または拒否するサマリー通知(summary notice)を当事者に発出。

・ 重要性や新規性の高い案件では、長官が判断理由を示す決定書(decision on institution)を発行することがあります。

・ 長官は必要に応じて、審理開始判断をPTABの1名または複数のメンバーに付託することも可能です。

・ 審理が開始された場合は、従来どおりPTABが審理(trial)を実施します。

 

実務上の留意点

・ ブリーフィング手続(裁量的・非法定考慮事項等)は現行どおりであり、申立人・特許権者の提出要件に変更はありません。

・ 2025年10月20日以前に付託された案件については、これまでどおり3名構成のPTABパネルが審理開始の可否を決定します。

・ 今後、長官による直接判断が増えることで、政策的観点からの一貫性確保裁量判断の透明性向上が期待される一方、審理開始段階での政治的・制度的影響が注目される可能性もあります。

 

U.S. Patent and Trademark Office, Memorandum on Director Institution of AIA Trial Proceedings(2025年10月17日発行)

Director_Institution_of_AIA_Trial_Proceedings.pdf