米国知財便り
USPTOおよび司法省、イノベーション促進のためのインセンティブの重要性を再確認する「利害関係に関する声明(Statement of Interest)」を提出
2026.02.28
米国特許商標庁(USPTO)と米国司法省(Department of Justice)は2026年2月27日、テキサス州東部地区連邦地裁で係争中の特許訴訟Collision Communications, Inc. v. Samsung Electronics Co., et al.事件に関連し、「差止命令(injunction)」の重要性を強調する意見書(statement of interest)を提出しました。Statement of Interest of the United States of America: Collision Communications Inc. v. Samsung Electronics Co., Ltd. et al.
声明は、特許が本質的に持つ「排他的権利」を実効あるものとするためには、侵害行為を止める差止救済が不可欠であると改めて確認しています。特に、自ら発明を実施していない特許権者(いわゆる「非実施主体」)であるという理由だけで、差止の可能性を事実上閉ざすべきではないと明確に述べています。
この点は、2006年の連邦最高裁判決である eBay Inc. v. MercExchange, L.L.C. によって確立された「4要件テスト」との関係で注目されます。同判決以降、差止は自動的に認められるものではなくなり、とりわけ非実施主体に対しては差止が認められにくい傾向が続いてきました。
今回の意見書は、eBay判決の枠組み自体を否定するものではありません。しかし、差止請求を過度に制限する運用は、イノベーションへのインセンティブを損ない、結果として競争や経済成長に悪影響を及ぼしかねないと警鐘を鳴らしています。
政府機関が改めて「排他権の実効性」に言及したことは、今後の差止判断、とりわけ非実施主体に関する司法実務に一定の影響を与える可能性があります。特許権の本質とは何か―その原点を再確認する動きともいえそうです。