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岸本外国法事務弁護士事務所

米国知財便り

USPTO長官がビデオゲーム技術関連特許の査定系再審査を命令

2025.11.04

USPTOのSquires長官は11月3日、ビデオゲーム技術に関する米国特許第12,403,397号B2について、職権(長官主導)による査定系再審査(reexamination)を命じました。

 

本件再審査は、35 U.S.C. §304および37 C.F.R. §1.520に基づくもので、長官は第一次的に「再審査を行うべきか」を自ら判断する権限を有しています。すなわち、第三者からの請求を待たずに、USPTO内部の判断によって再審査を開始することが可能です。

 

本件において、長官は、出願審査時には記録されていなかった先行技術文献「Yabe」および「Taura」により、「特許性に関する実質的な新たな疑義(SNQ:Substantial New Questions of Patentability)が提起されたと判断しました。

 

なお、このようなディレクター主導の再審査は、第三者による再審査請求(37 C.F.R. §1.510)とは異なる制度であり、代替措置ではありません。

 

一般の第三者が再審査を希望する場合は、37 C.F.R. §1.510に基づき、37 C.F.R. §1.20(c)(1)または(c)(2)に定める請求書および手数料を提出する必要があります(MPEP §2239参照)。

 

- 実務上のポイント ―

 

長官主導による再審査命令は、特定の技術分野や社会的注目を集める特許に関して、USPTOが自発的に特許の有効性を検証する手段として用いられることがあります。

 

特に、近年ではAI・ゲーム・通信・半導体分野など、急速に技術革新が進む領域で、審査時に把握されなかった先行技術が後に見つかるケースが増加しています。

 

企業の知財部門としては、

・公開後も自社特許の先行技術監視を継続し、潜在的な再審査リスクを把握しておくこと、

・他社特許に対しては、第三者請求制度だけでなく、長官主導再審査が行われる可能性を想定しておくこと、

が実務上のポイントとなります。

 

【参考:長官主導再審査の位置づけ】

長官主導による再審査命令は頻度としては多くありませんが、過去にも特許の品質確保や制度的信頼性の観点から、USPTOが自発的に介入した事例があります。

 

これは、PTABや連邦地方裁判所での争訟手続きとは異なり、行政内部の監督的機能としての性格を有します。

 

本件は、USPTOが「公的利益に基づく特許品質管理」の姿勢を強めている一例といえ、今後も同様の再審査命令が続く可能性があります。