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初めてのフライトは実は渋谷だった✈️💺💺💺
2026.07.16
私が初めて旅客機に乗ったのは、成田でもなく、羽田でもなく、渋谷でした。
もちろん、本物の空を飛んだわけではありません。
私が学生だった昭和の時代、渋谷駅のハチ公前交差点のすぐ目の前にあった「羽田」という純喫茶。そこが、私の人生最初の「フライト」の舞台でした。
ハチ公像から目と鼻の先、現在の星乃珈琲店があるあたりにあったビルの階段を上がると、地上の喧騒とはまるで別の空間が現れました。
扉を開けると、店内は旅客機の客室を思わせる造りになっていました。客席には、飛行機で使われていたのではないかと思わせるシートが、すべて同じ方向を向いて並んでいます。その座席に深く腰を下ろし、備え付けのテーブルを引き出すと、まるでこれから飛び立つような気分になったものです。
壁には機内の窓を模した装飾もあり、店全体が一つの飛行機として作られていました。
さらに印象に残っているのが、軽食や飲み物の出し方です。ウェイトレスの方が運んでくるナポリタンやトースト、コーヒーなどは、機内食を思わせる仕切り付きのトレイに載せられていました。
メニューは純喫茶の定番なのに、そのトレイで運ばれてくるだけで、気分はすっかり空の旅です。
ハチ公前で友人と待ち合わせ、そのまま店へ入る。コーヒー一杯の値段で、ほんの少しだけ旅客機に乗った気分を味わえる「羽田」は、当時の若者にとって遊び心に満ちた場所でした。
昭和の渋谷には、このような個性の強い喫茶店がいくつもありました。店に入ること自体が一つの体験であり、それぞれの店に、その店だけの物語がありました。
あれから半世紀近くが経ちました。今では飛行機で海外へ出かけることも珍しくなくなり、渋谷の街並みも大きく変わりました。「羽田」があった場所にも、当時の面影は残っていません。
それでも、現在のスクランブル交差点を眺めるとき、同じ方向を向いて並んでいたあの座席と、機内食のようなトレイで運ばれてきたコーヒーを思い出します。
空を飛ばなかったあのフライトは、今も私の記憶の中を静かに飛び続けています。