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岸本外国法事務弁護士事務所

米国知財便り

米連邦最高裁、ニューマン判事事件の裁量上訴を却下 ― 憲法上の重要論点はなお残されたまま

2026.06.16

米国連邦最高裁は2026年6月15日、CAFCのPauline Newman判事が申し立てていた裁量上訴(certiorari)を却下しました。これにより、現職のArticle III判事である同判事に対する職務停止措置は当面維持されることとなりました。

 

本件については、過去の『米国知財便り』でもご紹介したとおり、CAFCの司法評議会(Judicial Council)が、Newman判事による医療記録の提出や医学的検査への協力拒否等を理由として、同判事の職務停止措置を継続してきました。

 

これに対し、Newman判事は、終身在職権を保障されたArticle III判事の職務を、議会による弾劾手続を経ることなく実質的に停止することは憲法に反すると主張していました。

 

最高裁は今回、Newman判事による裁量上訴を受理しませんでした。

最高裁はその理由を明らかにしていませんが、いくつかの要因が考えられます。

 

第一に、本件は高齢裁判官の職務適格性という事実関係に大きく依存する事件であり、最高裁が好む純粋な法律問題中心の事件とは性格を異にしていること。

 

第二に、下級審では本件の憲法問題そのものが判断されたわけではなく、「司法評議会による判断については司法審査が大幅に制限される」という手続上の理由により訴えが退けられていること。そのため、最高裁としても憲法問題に正面から取り組む前提が十分に整っていないと考えた可能性があります。

 

第三に、連邦司法府内部の規律・監督制度に最高裁が介入することについて、制度的な慎重姿勢を示した可能性もあります。

 

今回の裁量上訴却下は、下級審の判断内容を支持したことを意味するものではありません。しかしながら、少なくとも現時点において最高裁は本件への介入を見送ったことになります。

 

今後もNewman判事はFederal Circuit判事としての地位を失ったわけではありませんが、職務停止措置が直ちに解除される見込みは高くないと思われます。また、同判事を支援する団体は今後も利用可能な法的手段を模索するとしていますが、司法的救済の選択肢はかなり限定されたものとなったように見受けられます。

 

本件は特許法そのものに関する事件ではありません。しかし、「終身在職権を有するArticle III判事の職務を、議会による弾劾以外の方法でどこまで停止できるのか」という米国憲法上の重要な問題を提起しました。

 

最高裁は今回その問いに答えることを見送りましたが、この論点が将来再び争われる可能性は十分に残されているものと思われます。