米国知財便り
USPTO、長官レビュー申請期間を30日に延長 ― IPR開始決定に対する見直し申請に猶予
2026.07.10
米国特許商標庁(USPTO)は2026年7月、IPR等の審理開始決定(institution decision)に対するDirector Review(長官レビュー)の申請期限を、従来の14日から30日に延長すると発表しました。
従来、PTABが審理開始を決定した場合、その決定についてDirector Reviewを求める申請は14日以内に行う必要がありました。しかし、USPTO長官はこの規則の適用を一時的に停止し、今後は30日以内であればDirector Reviewを申請できることになりました。この取扱いは、Light & Wonder, Inc. v. Evolution Malta Ltd.事件(IPR2025-01072, Paper 30)において先例(precedential)として示されています。
さらに注目すべき点として、USPTOは例外的事情(exceptional circumstances)がある場合には、30日を超える申請期限の延長も認め得ることを明らかにしました。ただし、その前提として、PTABにおける審理が実質的に進行していないことが求められます。
同決定では、例外的事情として例えば次のようなケースが挙げられています。
・ 関連する係属訴訟において、争点となっている請求項の全部又は実質的全部が却下された場合
・ 関連訴訟において、争点となっている請求項の全部又は実質的全部を無効とする事実認定及び法律判断が示された場合
・ Sotera stipulationに違反が認められた場合
今回の変更は、一見すると単なる期限延長のようにも見えますが、実務上の意義は小さくありません。
Director Reviewを求めるかどうかは、関連する地裁訴訟の状況や当事者間の協議、さらにはPTAB以外で新たに判明した事情などを総合的に考慮して判断すべき場面が少なくありません。従来の14日という期間では、そのような検討を十分に行うことが困難なケースもありました。
今回の改正により、当事者は約1か月の検討期間を確保できるようになり、より慎重かつ戦略的な判断が可能になります。また、例外的事情があればさらに期限延長が認められる可能性を明示した点も、実務上の柔軟性を高めるものとして評価できます。
Director Review制度は近年、PTAB実務において重要性が高まっており、今回の運用変更も、その制度をより実効的なものとするための改善策の一つとして注目されます。
実務上は、Director Reviewを求めるか否かの戦略判断に十分な検討時間が確保されるようになった点が、今回の変更の最大の意義といえるでしょう。