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岸本外国法事務弁護士事務所

米国知財便り

Preambleはクレームの構成要件となるか ― CAFCがMoskowitz判決で判断基準を再確認

2026.09.18

米国特許のクレームでは、発明の名称、用途、目的などがPreamble(前文)に記載されることがあります。このPreambleがクレームの構成要件(claim limitation)となるか否かは、特許侵害やFTOの判断を左右する重要な問題です。

 

CAFCは2026年9月11日、Moskowitz Family LLC v. Globus Medical, Inc.事件において、Preambleがクレームを限定する場合について改めて判断を示しました。Moskowitz Family LLC v. Globus Medical, Inc., No. 2024-1696 (Fed. Cir. Sept. 11, 2026) (precedential).

 

1.Preambleに関する基本ルール

 

CAFCは従来から、Preambleがクレームを限定するかについて一律のテスト(litmus test)はないとしています。一般に、Preambleが発明の必須の構成やステップ(essential structure or steps)を規定する場合、またはクレームに「本質・意味・活力を与えるために必要(necessary to give life, meaning and vitality)」な場合には、Preambleは構成要件となります。

 

判断に際しては、①クレーム本文がPreambleの用語を先行詞の基礎(antecedent basis)として必要としているか、②Preambleが明細書で重要とされる構成やステップを規定しているか、③審査過程でPreambleを先行技術との差異を示すために利用したか、などが考慮されます。

 

これに対し、クレーム本文だけでクレームされた発明の全容(complete invention)が規定されており、Preambleが単に目的や用途を述べるにすぎない場合には、通常、Preambleは構成要件とはなりません。

 

2.Moskowitz事件

 

本件は脊椎インプラントに関する特許侵害訴訟です。

問題となった特許のclaim 1のPreambleは概略、

“A tool for manipulating and inserting a universal, intervertebral bone fusion spacer … wherein the … spacer includes an intervertebral cage having a first integral screw guide and a second integral screw guide …”

と規定していました。

 

これに続くクレーム本文では、“the intervertebral cage”、“the first integral screw guide”、“the second integral screw guide”と、Preambleで初めて導入された構成を参照していました。

 

CAFCは、このようにクレーム本文中の用語が、Preambleに記載された用語を先行詞の基礎(antecedent basis)としていることは、Preambleがクレームの必要な構成要件であることを示す重要な手掛かり(strong indication)であるとしました。

 

Preambleを除外すると、toolがどのようなspacerやcageを操作するものなのかという重要な意味が失われることから、Preambleは単なる用途の記載ではなく、クレームを限定する(limiting)と判断しました。

 

さらに、明細書では本発明が“a unique universal bidirectional screw (BDS) system”として説明されていました。CAFCは、“universal”が単なる意図した使用(intended use)ではなく、発明の基本的特徴(fundamental characteristic)であるとして、“universal”だけをPreambleから切り離して非限定的(non-limiting)とする特許権者の主張も退けました。

 

このクレーム解釈の結果、特許権者が侵害被疑製品が侵害しないことを認めていたため、CAFCは非侵害のサマリージャジメントを支持しました。

 

3.実務上のポイント

 

Moskowitz判決は、Preambleに関する従来の判例を変更したものではありませんが、FTO調査や非侵害鑑定における分析方法を再確認するうえで参考になります。

 

「Preambleだから構成要件ではない」と最初から除外すべきではありません。

クレーム本文がPreambleをantecedent basisとして必要としているか、Preambleが単なる目的・用途なのか、それとも明細書で発明の重要な構造・特徴として説明されているか、さらに審査過程で先行技術との差異を示すために利用されていないかを確認する必要があります。

 

Preambleについても通常のクレーム解釈と同様、クレーム文言、明細書および審査過程を含む内的証拠(intrinsic evidence)全体から、クレームの構成要件となるかを判断することが重要です。