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岸本外国法事務弁護士事務所

米国知財便り

米国外で行われた製造・試験と米国特許侵害(「域外適用」) ― CAFC VLSI Technology v. Intel判決

2026.09.21

米国特許法は原則として米国内の行為に適用され、米国外の行為には及びません。本件では、§271(a)(直接侵害)との関係で、製品の製造・試験が海外で行われ、その製品が米国に輸入・販売された場合の侵害が問題となりました。

 

CAFCは2026年4月14日、VLSI Technology LLC v. Intel Corp., No. 2024-1772において、この米国特許法の「域外適用(extraterritoriality)」の問題について判断を示しました。

 

1.事件の概要

 

VLSI(原告特許権者)は、Intelのマルチコア・プロセッサが米国特許第8,566,836号を侵害すると主張しました。同特許は、各プロセッサ・コアの性能パラメータを測定し、その値に基づいてタスクを実行するコアを選択する技術に関するものです。

 

Intelは、性能パラメータの測定は海外の製造施設での試験時に行われ、米国内では行われていないことを理由に非侵害を主張し、地裁はこれを認めました。

 

2.方法クレームと当事者間の合意

 

ところが、VLSIとIntelは訴訟の初期段階で、技術的要件を満たすIntel製品および関連行為の70%について、35 U.S.C. §271上必要な米国との関連性(U.S. nexus)を有するものとみなすとの合意(stipulation)をしていました。

 

Intelは、この合意は損害額算定のためのものにすぎないと主張しました。しかしCAFCは、合意が「§271の各項が要求する米国との関連性」と明記していることから、侵害判断にも適用されると解釈しました。このため、地理的要件以外のクレーム要件が立証されれば、その70%について米国との関連性が認められるとして、方法クレーム(method claim)について地裁の判断を覆しました。

 

3.装置クレームについての判断

 

装置クレーム(apparatus claim)についてCAFCは、§271(a)上問題となるのは、クレームされた機能がどこで実行されたかではなく、製造、使用、販売の申出、販売または輸入という侵害行為が米国内または米国向けに行われたかであるとしました。

 

Intelが侵害被疑製品を米国に輸入・販売していたことに争いはありませんでした。したがって、性能パラメータの測定が海外で行われたことを重視した地裁の判断は誤りであるとしました。

 

さらにCAFCは、装置クレームでは、侵害被疑製品が「重要な変更を加えることなく、クレームされた機能を合理的に実行できる(reasonably capable of performing the claimed functions without significant alterations)」かが問題になるとしました。本件では、Intel製品に測定機能を実行する内蔵回路が存在するとの証拠があったため、CAFCは非侵害のサマリージャジメントを覆しました。

 

4.実務上のポイント

 

方法クレームについては、本判決が海外で実施されたステップに一般的に米国特許法を適用したものではなく、70%についてU.S. nexusを認める特殊な合意が存在したことに注意が必要です。

 

一方、装置クレームについての重要なtakeawayは、「海外で試験(testing)を行った」という事実と、米国特許法のterritorialityの問題とを混同してはならないという点です。海外で、クレームされた機能を実行したというだけで非侵害になるわけではありません。

 

FTO調査では、製造・試験工程の所在地だけでなく、§271(a)上の侵害行為が米国内または米国向けに行われるか、さらに、米国に輸入・販売される最終製品自体が、重要な変更を加えることなくクレームされた機能を実行できる構造を備えているかを確認することが重要です。

 

参考:米国特許法 §271の主な侵害類型

 

1.直接侵害(direct infringement):

・  271(a):米国内での製造・使用・販売の申出・販売、または米国への輸入

2.間接侵害(indirect infringement):

・ 271(b):誘発侵害(induced infringement / inducement)

・ 271(c):寄与侵害(contributory infringement)

3.国外関連行為に関する特則:

・ 271(f):特許発明の構成部品を米国から外国へ供給し、外国で組み立てる場合等に関する侵害

・ 271(g):米国特許の方法によって外国で製造された製品の米国への輸入・販売等に関する侵害

 

※米国特許法は「属地主義(territoriality principle)」を原則としますが、§271(f)、(g)では一定の国外関連行為について侵害責任を規定しています。